バス内で、ここしばらく会っていなかった友人D氏にあった。聞くところによると、D氏は少し前まで肺を患って入院していたようであった。今は大丈夫、とのことなので、多少の安堵感を抱き、雑談にいそしんだ。
彼は頑なに医者を目指す、いわゆる「ガリ勉」と称される層の人間なのであるが、それでも人間性は豊かで、彼とする学術的は会話には華があった。自分の話が通じる同年齢の人間、というとD氏しか思いつかない。中でも自分が遺伝的アルゴリズムの話をした際、彼が生物学の話題を引き合いに出したのは大いにうれしかった。結局そのアルゴリズムを深くまで伝えることはできなかったのであるが、「遺伝的アルゴリズム」という何やら専門色が極彩色で彩られたかのような単語を聞いてすら、一歩引いた立場から聞くのではなく、あえて首を突っ込もうとした彼の態度には感心した。